研究業績
デイケア通所者本人へのサイコエデュケーション -ABCプログラムを用いて-
精神デイケア科 江守賢次,荒井秀樹,田尻浩嗣,花岡昭,渡辺和子,山野俊一,中村里佳,古川詩穂
はじめに 慢性精神障害において日常生活レベルの障害と前向きに付き合いながら,より健康で満足度の高い生活をめざす際には,障害をどう受容し対処するかがポイントとなる.この点から,患者本人に対する心理教育的アプローチは必要不可欠である.一方,患者側のニーズも重要なファクターであると考えられる.今回「ABC プログラム」を用いて患者に対しサイコエデュケーションを実施し,アンケートによりユーザーである患者側の評価を検討した. 1980 年代にJ,Wilder により考案された「ABC プログラム」は,さまざまな技能領域を扱う一連のプログラムの総称であり,精神障害者がより満足できる生活を送ることができることを目的としたサイコエデュケーションプログラムである.わが国では,1990年代に清水らにより「心(脳)の病を知るためのABC」と「薬物治療のABC」の二つが翻訳され導入されている.「心(脳)の病を知るためのABC」と「薬物治療のABC」のいずれも,教材は教師用テキスト,生徒用テキスト,およびロールプレイ用カードから構成されている.富山市民病院では1999年よりデイケアにおいて導入した.今回われわれは,デイケア通所者に対して「ABC プログラム」を試行し,自記式アンケート調査により「ABC プログラム」の自覚的理解度,自覚的有用度,満足度について評価した. 方法 二つのプログラムはそれぞれABCの3授業に分かれており,「心(脳)の病を知るためのABC」では,「精神分裂病」をA授業で,「気分障害」をB授業で,「不安障害」をC授業で扱う.一方「薬物治療のABC」では,「主治医と情報を共有する方法」をA授業で,「正しく服薬する方法」をそれぞれB,C 授業で扱う.各授業は教師用テキストに沿って進行できるようになっており,生徒用テキストには各授業のポイントが簡潔に記載されている.お互いに学び合うことが目的であるため,生徒である患者にテキストの内容を読ませたり,自分の体験を語らせることにより授業を進行させる.習ったことのフィードバックはカードゲームを通して行われる. 各授業は毎週1回1時間づつ実施し,ABC 3 授業を1 クール終了した時点ですべての授業に参加した者を対象に自記式アンケート調査を行った. アンケートは,自覚的理解度を問う質問,自覚的有用度を問う質問は,精神分裂病4項目,感情障害3項目,不安歳障害3項目,薬物治療4項目の計14項目ずつである.自覚的理解度に関しては,よくわかる,少しわかる,少しわかりにくい,わかりにくいの4段階で,自覚的有用土に関しては,とても役に立つ,少し役に立つ,あまり役に立たない,役に立たないの4段階で回答してもらった. 満足度を問う項目は,8項目から構成され,満足度に関しては国際的に利用されているClient Satisfaction Questionnaire 8項目版を用い,4段階で回答を得た. 対象 当院デイケアに通所しABC 3 授業すべてに参加し,1 クールを終了しアンケートを回収できた16名である.男性8名,女性8名であり,16名中13名が精神分裂病圏,3名が感情障害圏であった.平均年齢は43.1歳,平均罹病期間は15.8年,平均デイケア通所期間は5.1年であった.平均教育期間は12.6年であった.精神分裂病圏13名の平均服薬療はクロールプロマジン(CPZ)換算で平均466.2mg/day であった.なお,薬物治療のABCプログラムも同時に受講した者は16名中10名であり,薬物治療に関しては10名で検討をした. 結果 自覚的理解度に関してであるが,「少しわかりにくい」,「わかりにくい」は合わせて「わかりにくい」として処理した.質問1 精神分裂病の症状,質問9 うつ病の症状,質問15 不安障害の症状などの項目で8割以上が「わかりやすい」と回答した.一方,質問7 精神分裂病の治療や質問17 不安障害の4つの種類の説明の項目では,半数近くがわかりにくいと回答した.症状については比較的理解しやすいと感じている反面,治療や医学的分類などは理解しにくい点があると思われる.疾患に対しての理解をより深めるためには,繰り返し学ぶなどの工夫が必要と考えられる.一方,薬物治療に関しては,比較的理解しやすいと感じているようであった(図1).
自覚的有用度に関しては,「あまり役に立たない」,「役に立たない」は合わせて「役に立たない」として処理した.ほとんどの項目で7割以上が役に立
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